妄想写真館02

"最果ての町"のそのまた向こうにある荒野を抜けた場所には魔王城がある。
 
「城」というにはいささか抵抗が出る程に無骨で禍々しい形状をしたその施設は、
この世界の裏側へ続くとされる洞窟の最深部に位置している。

陽の光は届かず、頼りは特殊な瘴気の帯びた怪しく薄暗い明かりのみ。
普通の人ならば、ものの数分で病に臥せってしまうこの場所は、
普段ならば、いくら金を積まれても行きたくはない。


しかしこの日、少女はこの場所に用があった。


5年前、瞬く間に世界を覆った悪意。
少女は両親も兄弟も産まれ育った村さえも失った。

悲しみに満ちた毎日に明け暮れる中、ある晩不意に訪れた精霊の導きにより、
貴重な青春も自身の命さえも投げ打つ覚悟で、
少女は勇者として世界の命運を一手に担う決意をする。

長い長い旅路の果てにようやく辿り着いた。
食料は片道分しか持って来ていない。
もちろん道中の身軽さを優先した理由もあるが、
少女はここで魔王を討ち、自分も死のうと決めていた。

憎き宿敵をこの手で仕留めるこの機会。
待ちに待ったこの時がようやく訪れた。


「魔王よ!その姿を表せ!必ずこの手で亡き者にしてくれる!」


しかしそこに現れたのは、国の王から知らされていた魔王などではなかった。


「キタナ ニンゲン…!」


8年前に計画が中止された「自律起動型ロボット製造計画」。
高度なAIを搭載した自律思考型ロボットの製品化に関する計画だった。

人間の暮らしに密接するロボットとの明るい未来に世界中の人々の注目が集まるも、
軍事利用をもくろむ社会の裏側の動きに対応して出た世界政府のお達しにより、
すべての計画は白紙に戻り、製造過程の物も含める全てのプロトタイプの廃棄が決定した。

そして今少女の目の前にいる"魔王"と呼ばれるソレは、
まだ世界が平和だった頃にテレビで見たロボットそのものだった。


「ワタシハ ナゼ ステラレナケレバ ナラナカッタノダ…」