少女は生まれつき病弱だった。
先天性の病気で、人より血中の抗体の量がかなり少ない。
そのため昔から学校は愚か、外に出歩くことにすらキツい制限を掛けられていた。
「前に外に出たのはいつだったかな…」
そんなことを考えてしまう程の少ない機会。
しかし、この日の少女はすこぶる調子がよかった。
顔の血色も良く、意識もしっかりしている。今日ならいける。
少女は主治医と両親に許可を得ると、急いで外へ出た。
この体調がいつまで続くともわからない。
土の感触を足の裏で確かめる。
風の匂いも太陽の熱も、いつもよりずっと近くに感じる。
決して長くはないが、少女にとってとても濃密な時間は瞬く間に過ぎて行った。
「生きているうちに、あと何度外で遊べるのだろう」
遊び疲れて動けなくなった少女はそんな事を考えながら、
冷たい腕に抱かれ、のぼせ上がった熱を冷ましながら帰路についた。
「冷たくて気持いい…」